密集住宅地の防災・減災の計画
トルコの古都・ベルガマの密集住宅地の保存計画は、“個” としての建築の保存および耐震設計が優先され、 住宅地 “全体” の維持・継承の方針や防災計画(公園・空地の配置、避難経路等)の視点が不十分でした。 さらに周辺の村や郊外の町と、世界遺産になって来訪者も増えたエリアの防災計画は、同じものでした。
World Heritage プロジェクトでは、住民と来訪者も考慮した防災計画を提案し、密集住宅地全体の保存・ 持続可能性を目指します。
身近な空間に守られる
健康的で持続的な生活のためには、密集住宅地 =「Mahalle」におけるコミュニティを単位とした保存・ 防災計画が必要不可欠です。2014 年に世界遺産に登録されたベルガマでは、住民の憩いの空間=「ひろば」 が、非常時は緊急避難所=「防災ひろば」として活用できるような「ひろば」を提案しますが、ここでは 来訪者のことも考えた提案を行います。
非常時と日常時の計画
密集住宅地において緊急時避難場所として機能し得る「ひろば」と避難経路を対象として、日常時と非常時の利用方法を検討して、全体ならびに部分の計画をつくります。
密集住宅地の緊急時避難場所は、住民が毎日の生活の中でなじみのある公園やモスク、店舗横の空き地、駐車場などの「ひろば」にします。災害が発生したとき、まずは普段から馴染みのある「ひろば」に逃げられるようにします。このひろばには、夏でも長時間過ごせるように木を植えて木陰を作ります。
またひろばの周辺の空いている伝統住居を、改修し、コミュニティスペースとして利用します。
ひろばのチェシュメや周辺の空き伝統住居から水が供給できるように整備します。
緊急時避難場所に向かう避難経路は、多くの行き止まり路地や住宅を効率的につなぐ道で、かつ観光客にも分かりやすい道を選びます。道には、サインとなる青いタイルを敷きます。
その後、一時滞在ひろばへ移動をしますが、大きなひろばには、レスキュー隊が到着するまでの間に利用する食料や衣料、毛布、テント等を収納する備蓄庫、医療品置場と医療スペース、キッチン、トイレなども備わっています。また女性用のスペースや授乳室も計画します。
大きな広場には、備蓄庫がある複数の丘があり、その丘により守られた外部空間には、テントを張ることが可能です。
防災計画のダイアグラム
防災広場の計画
防災計画がつくる人のつながり
防災・減災計画により、人と空間のつながり、人と人のつながりを作り出します。緊急避難場所に指定されるひろばは、日常時は木陰で男性が休んでチャイを飲んだり、女性や子供たちが草花を育てる「ガーデン」です。日頃から住人があつまり、また来訪者も休憩できるスペースとなるように、計画します。 一時滞在できる広場には、医者ガレノスがベルガマで研究をしてきた薬草やベルガマにある植物、綿そして桜を植えます。いわゆる植物園ですが、植物を育てて管理をするのは、住民たちです。住民はこのひろばを通じて交流を深めていきます。
このように、日常と非常の利用方法を検討して、密集住宅地全体と部分の防災計画をつくります。